「賃料が毎月入るほうがいい気がするんですが、売ればまとまったお金になる。どちらが最終的に手元に多く残るのか、整理できていなくて」。使っていない土地を持つ地主さんから、こうした相談が寄せられることがあります。
この迷いには、共通するポイントがあります。月々の収入が積み重なるイメージと、まとまった現金が手に入るイメージを、なんとなく比べている状態です。
ただ、月額の印象だけで比べていては、判断できません。売却代金から税金を引いた手取り、賃料の累計から税金を引いた手取り、さらに一時金がある場合はその分を加える。税引き後の金額を同じ条件で揃えて初めて、比較できるようになります。
売ると、税引き後にいくら手元に残るか
売却によって手元に残るのは、売却代金そのものではありません。
売却代金から取得費(その土地をいつ、いくらで取得したかによって決まる費用)と仲介手数料などの譲渡費用を差し引いた額が、譲渡所得になります。その譲渡所得に税率をかけた金額が譲渡所得税です。
税率は保有年数によって変わります。おおむね5年を超えるかどうかで区分が変わり、長期保有のほうが税率は低くなります。具体的な税率は年度や個人の状況によっても異なりますので、確定申告の際は税理士にご確認ください。
計算するうえで、特に注意が必要なのは取得費です。昔から持っている土地で、購入当時の資料が残っていない場合、売却代金の5%を取得費とみなして計算する方法があります。この場合、課税される譲渡所得の割合が大きくなり、税引き後の手取りが予想より少なくなることがあります。
まず、今の売却価格の見立てがわからないと、税引き後の計算を始められません。
貸すと、一時金と賃料の累計はどうなるか
土地を貸す場合、お金の入り方は売却とは異なります。
契約時にまとまった金額(一時金)が入ることがあります。建設協力金や保証金という形で、借りる側が先に預けるものです(→「土地を貸すと、契約時にお金が入ることがある」)。一時金がある場合、売却代金との比較は大きく変わります。
毎年の賃料収入には所得税と住民税がかかります。給与など、ほかの収入と合算して課税されるため、税率は個人の状況によって異なります。こちらも税理士にご確認ください。
賃料の累計は、年数に応じて増えていきます。10年、20年と貸し続ければ、売却代金を上回ることもあれば、下回ることもあります。どちらになるかは、賃料の水準と一時金の金額によって決まります。
賃料の水準は、土地の場所・広さ・用途・借りる相手の信用力によって大きく異なります。同じ面積の土地でも、立地によって月額が数倍以上変わることがあります。「貸したらいくら入るか」は土地ごとに個別に見る必要があり、具体的な金額がわからなければ比較を始められません。
2つを並べると、何が判断の分岐点になるか
売る場合と貸す場合を数字で比べるには、まず情報を揃える必要があります。
- 今の土地の売却価格を見立てる(税引き後の手取りを計算するための前提)
- 取得費と保有年数を確認する(譲渡所得税の計算に必要)
- 賃料の水準を見立てる(場所・用途・借主の状況を確認)
- 一時金の有無と金額を確認する(貸す場合の最初の収入)
- それぞれの税引き後の金額を、同じ年数で並べる
| 売る場合 | 貸す場合 | |
|---|---|---|
| 最初に入るお金 | 売却代金 | 一時金(ある場合) |
| 継続収入 | なし | 毎年の賃料 |
| かかる税金 | 譲渡所得税 | 所得税・住民税 |
| 手取りの計算 | 売却代金 − 譲渡所得税 | 一時金 +(賃料累計 − 所得税・住民税) |
一時金が大きければ、最初から売却代金との差が縮まります。反対に、一時金がない場合は、賃料だけで追いつくまでに時間がかかります。
判断の分岐点は、「何年で貸す場合の累計が売却代金を超えるか」です。その年数が短いほど、貸す選択が有利になります。反対に、逆転まで30年以上かかる場合や、相続・納税のタイミングが近い場合は、まとまった現金が手に入る売却のほうが現実的なことがあります。
急いで必要なお金と、時間をかけて得られるお金を分けて考える。この2つを整理して初めて、貸すか売るかの比較に意味が出てきます。
数字を見てから、貸すか売るかを決める
私は不動産鑑定士として、売却価格と賃料の見立てを、どちらも数字でお伝えできます。
前職の鑑定部では、価格の判定だけを担当していました。仲介と組み合わせることは、業務上認められていませんでした。独立してからは、鑑定も仲介も担えるようになりました。だからこそ、「売却価格を出して、賃料を出して、それを並べてから決める」という順番を、ひとつの窓口で進められます。
まずは概算で、今の売却価格の目安を幅でお伝えします。同時に、その土地の賃料相場も見立てます。この段階では費用をいただきません。数字が揃ったところで、依頼するかどうかを決めていただきます。
どう動くか、あるいは動かないかは、その数字を見てから決めていただければ十分です。「今は売らず、持っておくほうがいい」という結論になることもあります。
数字が揃う前に、決める必要はない
税引き後の売却代金と、一時金と賃料累計を合わせた税引き後の金額。この2つを同じ年数で並べると、「貸す場合、何年で逆転するか」が見えてきます。
その数字をもとに、相続や納税のタイミングも考慮すると、いつ、どちらの道を選ぶかが決まってきます。感覚で比べていた問いが、具体的に答えられる問いへと変わります。
土地は一つひとつ条件が異なるため、どの土地でも同じようにうまくいくとは限りません。ただ、数字が揃う前に答えを出す必要はありません。
よくある質問
Q. 土地を貸した場合の賃料には、どんな税金がかかりますか?
賃料収入は不動産所得として、所得税と住民税の課税対象になります。給与など、ほかの収入と合算して課税されるため、税率は個人の収入全体の状況によって異なります。年間の収支を確定申告で申告する必要がありますので、具体的な金額は税理士にご確認ください。
Q. 売却した場合、譲渡所得税はどうやって計算しますか?
売却代金から取得費と仲介手数料などの譲渡費用を差し引いた額が「譲渡所得」になり、その金額に税率をかけて計算します。税率は、おおむね保有期間が5年を超えるかどうかで区分が変わります。昔から持っている土地で取得費の資料がない場合は、売却代金の5%を取得費とみなして計算する方法があります。税率や計算の詳細は税理士にご確認ください。
Q. 契約時に一時金が入ると、貸す場合と売る場合の比較はどう変わりますか?
一時金が入る場合、貸す場合の最初の収入が大きくなり、売却代金との差が縮まります。一時金が大きいほど、毎年の賃料で追いつく必要がある分が減るため、逆転するまでの年数が短くなります。一時金の有無と金額は、比較の前提として最初に確認しておきたい項目です。
Q. 貸すか売るかを比べるには、何を先に確認すればいいですか?
まず、今の土地の売却価格の見立てが必要です。それがないと、税引き後の手取りを計算できません。あわせて、その土地の賃料相場と一時金の有無を確認します。この3つが揃って初めて、貸す場合と売る場合を同じ条件で比較できます。まずは概算の見立てからお話しできます。費用はこの段階ではいただきません。

