相続した土地を前に、「業者に買い取ってもらうのか、仲介で売るのか」と迷う方は少なくありません。どちらが正解かは、状況によって異なります。ただ、どのような点で選び方が分かれるのかは、整理できます。
判断の軸となるのは、期限・手取り・確実性の3つです。この3つが今の自分の状況にどう当てはまるかを考えることで、どちらを選ぶべきかが見えてきます。
業者買取が安くなる理由と、仲介で高くなりやすい仕組み
業者買取と仲介では、売却価格の水準が違います。なぜ差が生まれるのか、それぞれの仕組みを先に知っておくと、判断がしやすくなります。
業者買取が安くなる理由
業者買取では、市場で売るよりも価格が低くなるのが一般的です。これには、明確な理由があります。
買い取った会社は、土地をそのまま使うわけではありません。測量して境界を確定させ、区画に分けて整備するなど、商品化してから売却します。区画分譲などを前提に価格を設定するため、最終的に売れると見込まれる金額から逆算して買取価格が決まります。売れる状態にするためのコストと時間がかかるからです。
仲介で高くなりやすい理由
仲介では、その土地を実際に使いたい相手を探します。事業用地であれば、その立地や広さに合った目的を持っている買い手が見つかると、業者が買い取る場合より高くなることがあります。用途が決まっている相手ほど高くなりやすく、また、土地の値段はそこから何ができるかを見ている買い手の採算によって変わります。
ただし、買い手を探すのに時間がかかり、必ずしも買い手が見つかるとは限りません。これが仲介の特徴です。
また、同じ土地でも、店舗に適した部分と住宅に適した部分に分けられる場合は、それぞれの用途に合った買い手を探せる仲介の方が、より高い価格で売却できることもあります。土地は一つひとつ条件が異なるため、どの土地でも同じようにうまくいくとは限りません。
期限・確実性・手取りが、買取か仲介かの分岐点になる
どちらを選ぶかは、今の状況によります。3つの観点でそれぞれ見ます。
期限がある場合
相続税の納税期限は申告期限まで10か月です。この間に売って現金を作るためには、引き渡しまでにかかる時間から逆算して動く必要があります。
仲介では、売り出してから買い手が決まるまでに数か月かかることがあります。そこから契約・引き渡しと進むため、測量が必要な土地や法令上の手当てが要る土地は、さらに時間を要します。相続した土地の売り方は、この期限と手順の見極めから始まります。
期限が近い場合は、業者買取の方が現実的な選択になります。買い手を探す工程がないため、比較的短い期間で現金化できます。
ただし、複数の区画がある土地では、急ぐ部分だけ先に業者買取で現金化し、残りは時間をかけて仲介で売るという方法もあります。急ぐお金と待てるお金を分けて考えることで、選択肢が広がります。
確実性を重視する場合
仲介は、売り出しても必ず売れるとは限りません。立地・形状・法令上の制約によっては、問い合わせが来ても条件が折り合わなかったり、そもそも買い手が現れない期間が続いたりします。
確実に売ることを優先するなら、業者買取の方が判断しやすいです。
手取りを増やしたい場合
手取りを増やすには仲介の方が可能性があります。ただし、売り出し価格と実際に成立する価格の差、仲介手数料、売却後の税負担(譲渡所得税)なども考慮した上で判断します。
税務上どのように扱われるかについては、顧問の税理士にご確認ください。
売り方を決める前に、価格の水準を先に確かめる
「買取か仲介か」を先に選ぶより、その土地が今いくらくらいなのかを先に知っておく方が、判断の材料が増えます。
価格の水準が分からないまま業者から提示額を受け取っても、それが妥当かどうかの判断がつきません。また、仲介で売り出すとき、売り出し価格の根拠も持てません。先に目安を持っておくことで、どちらに進むにしても判断の精度が上がります。
私は、ご相談を受けたとき、まず無料で概算をお出しします。適正な価格がどのくらいの水準になりそうかを、幅でお伝えします。その数字を見てから、買取にするか仲介にするか、あるいは一部を買取で急いで残りを仲介で、という判断ができます。
相続した工場跡地の事例でも、急ぐお金と待てるお金を分けて考えることで選択肢を広げた経緯をお伝えしています。
鑑定評価書は、判定の根拠が残る書面です。正式にお出しした後で内容を差し替えることはできません。だから、先に価格の水準をお見せして、その目的に鑑定評価が必要かどうかも含めて、ご相談者と顧問の税理士に決めていただきます。どう動くか、あるいは動かないかは、その数字を見てから決めていただければ十分です。
急ぐお金と待てるお金は、分けられる
業者買取か仲介かという問いは、期限・手取り・確実性の3つで整理すると、自分の状況に合った方向が見えてきます。どちらが正解かは土地ごとに違いますが、判断の前に価格の水準を先に知っておくことが、動いてから後悔しないための順番です。
よくある質問
Q. 業者買取は、なぜ仲介より価格が低くなるのですか?
業者が買い取った後、区画分譲など商品化して売るためのコストと時間がかかるからです。測量・境界確定・整備などを経てから売れる状態にするため、最終的に売れる見込みの価格から逆算して買取価格を設定します。転売で儲けるからではなく、手を入れて商品にする前提で価格を決めているためです。
Q. 売却を急ぐ必要があるとき、買取と仲介のどちらを選べばよいですか?
相続税の納税期限などがある場合は、業者買取の方が現実的な選択になることが多いです。仲介では買い手を探す期間が必要で、数か月から1年以上かかることがあります。ただし、土地が複数区画に分けられる場合は、急ぐ部分だけ先に買取で現金化し、残りを仲介で売るという方法もあります。状況に合わせて一緒に考えます。
Q. 仲介で売り出しても、必ず売れるとは限らないのですか?
必ず売れるとは限りません。立地・形状・法令上の制約によっては、問い合わせが来ても条件が折り合わなかったり、買い手が見つかるまでに時間がかかる場合があります。確実性を重視する場合は、業者買取との組み合わせも選択肢のひとつです。
Q. 葵不動産では、買取か仲介かを決める前にどのような相談ができますか?
まず、その土地の価格がどのくらいの水準になりそうかを、無料でお伝えします。この段階では費用はかかりません。価格の水準を見てから、業者買取・仲介・保有継続のどの選択が合っているかを一緒に考えます。売る・貸す・持つ、3つの道を同じ数字の上に並べてお伝えしますので、決める前の段階でも構いません。

