土地についてご相談を受けていると、「売ることは決めているので、いくらで売れるか知りたい」とおっしゃる方がいます。
もちろん、売却を前提に価格を出すことはできます。ただ、それだけでは「売るのと貸すのと、どちらが自分に合っているのか」までは分かりません。
先に売る・貸すを決めるのではなく、まず今の不動産の価格を知る。そのうえで選択肢を比べることで、最初は考えていなかった方法が見えてくることがあります。
先に決めると、比べる機会が消える
売るか・貸すか・持ち続けるか。それぞれに、それぞれの数字があります。
売った場合の手取り額。貸した場合の毎月の収入と、10年分の累計。持ち続けた場合にかかる固定資産税と管理の手間。これらが同じ土台の上に並んだとき、どれが今の状況に合っているかを考えられます。
「売ることにしました」と先に決めて相談に来ると、この比較が出てきません。貸した場合と比べていくらかという問いは、最初から視野に入りません。選んだあとで「貸したほうがよかったかもしれない」と気づいても、そこから選択肢を見直すのは簡単ではありません。
値段を知ってから、道を選ぶ
私は名古屋の葵不動産で、土地や建物の価格を判定しています。売買の仲介もします。ただ、その前に必ず価格を判定します。値段を決めてから売るので、売るために値段を決めることがありません。
価格が出ると、3つの方法を同じ数字の単位で並べられます。「この価格で売ると、手元にいくら残るか」「月いくらで貸せるなら、5年・10年でいくら入るか」「持ち続けるとすれば、年間いくら出ていくか」。こうして並べると、どれを選ぶかが初めて判断できる問いになります。
先に売ることを決めてしまうと、この比較が出てきません。「いくらで売れるか」だけが問いになって、他の選択肢は最初から閉じています。
先に概算を出して、見てから決めていただく
相談の最初に、まず無料で概算をお出しします。正式な評価書ではなく、「この土地は今いくらくらいか」という目安です。それを見てから、どの道を選ぶかを考えていただきます。
概算を見て「この価格なら売らなくていい」という結論になることもあります。それは構いません。数字を見て判断するのが目的で、売ることを前提に数字をつくるわけではありません。
不動産鑑定評価書は、判定の根拠が残る書面です。正式にお出ししたあとで内容を変更することはできないため、先に概算の段階で確認していただきます。その目的に不動産鑑定評価書が必要かどうかも含めて、ご相談者と顧問の税理士に決めていただきます。
もちろん、土地はひとつずつ条件が違いますので、概算を確認したあとの判断が全員同じになるわけではありません。数字を知ってから決めることで、動き方の選択肢が増えます。
よくある質問
Q. 売ると決めていなくても、相談できますか?
はい、相談できます。「売ろうか迷っている」「どの選択肢が合っているか分からない」という状態でご相談ください。まず今の土地がいくらかを確認してから、売る・貸す・持つをそれぞれの数字で比べます。
Q. 概算と正式な鑑定評価書は、何が違いますか?
概算は、今の土地の価格の目安を口頭または簡易な書面でお伝えするものです。正式な鑑定評価書は判定の根拠が残る書面で、相続税の申告・遺産分割・金融機関への提出などに使います。正式な評価書は費用が発生します。まず概算を見てから、必要かどうかを決めていただきます。
Q. 売るより貸すほうがいい、という結論になることはありますか?
あります。今の価格で売った場合の手取りと、貸した場合の収入の累計を比べると、長い目で見て貸したほうが有利になることがあります。どちらが合っているかは、土地の条件と持ち主の状況によって変わります。その比較が出てきてから、判断していただきます。
Q. 相談のあとで、必ず仲介の依頼をする必要がありますか?
ありません。概算を確認して「今は動かない」という結論になっても構いません。先に数字を知っておくことで、何かのタイミングで動く際に、比べられる基準が手元にあります。仲介の依頼は、売る・貸すを決めてからのお話になります。

