相続した土地、一括売却で損をするのはどんなとき?

一括で全部売れば、早く終わる。そう考えるのは自然なことです。でも、その「早さ」の代わりに何を手放しているかが、意外と見えていないことがあります。

愛知県の相続税の課税割合は15.5%で、全国2位です(令和5年分・名古屋税理士会関連資料)。土地を持つ相続人にとって、納税資金をどう確保するかは切実な問題です。

その際、「とにかくまとめて売ってしまおう」と判断した結果、後になって「もう少し違う方法もあったかもしれない」と感じる方もいます。

同じ土地でも、用途が違えば売れる価格は違う

まず知っておいてほしいのは、1枚の土地でも場所によって適した用途が違い、売れる価格も変わるということです。

店舗に適した部分と、住宅に適した部分に分けることができ、それぞれ売れる価格が異なります。

道路に面した前面は、飲食店や物販店舗、事務所といった事業目的の利用に向いています。人目に触れやすく、駐車場の確保もしやすい。一方、同じ土地でも奥に入った部分は、静けさや日当たりを求める住宅の買い主に向いています。向いている用途が違えば、その土地を高く買ってくれる相手も違ってきます。そのため価格の水準が変わってくるのです。

この違いは、土地全体をひとつのまとまりとして見ていると気づきにくくなります。全体の平均的な価格しか見えず、場所ごとの特性が埋もれてしまいます。不動産鑑定士として土地を見るとき、私が最初に確認するのが「どの部分が何に向いているか」です。その確認がないまま価格を議論しても、実態に合った数字は出てきません。

まとめて売ると、高く売れるはずの部分まで安くなる

「まとめて全部売れば、たしかに納税には間に合います。ただそれだと、本来もっと高く売れたはずの部分まで、まとめて安く手放してしまうことになりかねません。」

これは私がよく感じていることです。

一括売却の相手として多いのは、不動産会社による買取です。買い取った会社が区画分譲など、商品化して売る前提があるため、買取価格は市場で個人に売る場合より低くなるのがふつうです。その手間や費用が価格に含まれているからで、これは業者側の仕組みとして理解しておくことが大切です。

問題は、一括で売ると「土地全体に一つの価格が付く」ことです。店舗向けに高く売れたはずの前面部分も、住宅向けに需要があった奥の部分も、まとめて一つの値段になります。用途ごとに分けていれば、それぞれに向いた買い主を探すことができます。まとめてしまうと、その選択肢がなくなります。

「いくらで売れるか」を議論する前に、「どの部分がどんな価値を持っているか」を先に確認しておく必要があります。確認なしに動くと、手放した後から数字が見えてきて、後悔が残ることがあります。

急ぐお金と待てるお金を分けてから動く

急ぐお金と待てるお金を分ける。これは、土地の価値を数字で読めてはじめてできる整理です。

相続税の納税期限は、相続開始から10か月です。この期限を逆算すると、土地を現金化するのに必要な時間も考慮しなければなりません。測量や境界の確定が必要になることもあり、売却を決めてからすぐに現金が入るわけではないためです。

だからまず、どの部分をどれだけ売れば納税資金が確保できるかを計算します。必要な金額が分かれば、急いで動かさなければならない部分と、じっくり検討できる部分が見えてきます。

住宅に適した部分を先に売却して納税資金を確保し、店舗に適した部分は、賃貸も視野に入れてあわてずに検討する。こうした動き方を現実的な選択肢として考えられるのは、土地を部分ごとに数字で見たうえで初めてです。

もちろん、土地はひとつずつ条件が異なるため、どの土地でも同じようにうまくいくとは限りません。形状や面積、法令上の制限によっては、分けて売却することが難しい場合もあります。それでも、先に土地全体の価値を把握してから動くことで、結果として手元に残るものが変わることがあります。

どうするかを決める前に、まずは数字を知りたい。そう感じた方は、その判断を大切にしていただいて大丈夫です。

まずはご相談ください

売る・貸すを決める前に、まず今の価格を確認するところからご相談ください。

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よくある質問

Q. まとめて売るより、分けて売ったほうが高くなりますか?

一概には言えませんが、用途の異なる部分が混在している土地では、分けて売ったほうが高くなる可能性があります。店舗に向いた部分は事業用の買い主、住宅に向いた部分は一般の買い主と、それぞれ需要が異なるためです。ただし、土地の形・面積・法令上の制限によって、区画を分けられるかどうかも変わってきます。実際に動く前に、どの部分がどんな価値を持つかを確認することが先決です。

Q. 業者買取の価格が市場より低くなるのはなぜですか?

業者が自ら買い取る場合、買い取ったあとに区画分譲などの形で商品化して売ることを前提としているためです。その作業や費用を踏まえた価格設定になるため、市場で個人の買い主に直接売る場合より低くなるのが一般的です。業者側の事業の仕組みからくる話であり、悪意があるわけではありません。このことを理解したうえで、買取と仲介のどちらで動くかを選ぶ必要があります。

Q. 区画を分けた場合、相続税の納税期限には間に合いますか?

相続開始から10か月という期限を逆算すると、測量・境界確定・法令上の手当てが必要な場合、すべての区画を期限内に売り切れるとは限りません。どの部分を先に動かせば納税資金を確保できるかを計算し、急ぐ部分と待てる部分を分けるのが実際的な進め方です。税務上の扱いは、顧問の税理士にご確認ください。

Q. 土地の用途や価値の判断は、誰に頼めばいいですか?

不動産鑑定士に相談するのが適しています。不動産鑑定士は土地の適正価格を根拠を示して判定する国家資格者です。土地の部分ごとの適性と価値の違いを把握したうえで、売却するか・貸すかといった選択肢を数字で比べる材料を提供できます。売買の仲介も行っている事務所であれば、価格の把握から実際の売却まで一貫して相談できます。

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