提案が来ても、動かないことが正解になる土地があります。
「購入を希望されている方がいます」「アパートを建てて有効活用しませんか」。こうした連絡が届き始めると、何か決めなければという気持ちになります。でも、自分の土地の価値を把握しないまま話が動き始めると、相手が示した条件に沿って判断することになりかねません。先に見立てを持っておけば、「動かさない」という選択肢も、数字をもとに検討できます。
提案が先に来て、数字が後から来る状況
遊休地や事業用地を持っている方のところに、不動産会社から連絡が届くことは珍しくありません。相続登記がされた不動産を市や区、町ごとに全件調べ、そのデータをもとに手紙を一斉に出す仕組みがあります。空き地を見つけ、住宅地図と登記情報から所有者を調べて連絡してくる営業もあります。連絡が多く届くのは、それだけ動かせる土地として目をつけられているということです。
届く提案には、相手の採算を前提にした価格や条件が含まれています。「このくらいの金額でお話できますか」という連絡が来ても、その金額が市場の実態に近いのかどうか、自分では判断できません。金額が先に示されると、まだ売ると決めていないのに話が動き始めてしまうことがあります。
提案が先に届き、自分の土地の価値を把握するのが後になる。この順番が、判断に迷う状況を作ります。
見立てを出すと、「持つ」も数字の上に並ぶ
不動産鑑定士は土地や建物が今いくらなのかを、根拠を示して判定するのが仕事です。私は売買の仲介も行いますが、その前に必ず価格を判定します。
相談を受けたとき、まず概算の見立てを出します。この段階では費用はかかりません。その土地の売却価格の目安や、売った場合にどのくらいの手取りになりそうかを、幅でお伝えします。
土地を動かしたい側の人たちは、それぞれ自分たちの採算を前提に話を進めます。そうした市場の中で、売る・貸す・持つという3つの道を数字で比べられる立場にいられるのが、私の仕事の特徴です。
見立てが出ると、3つの道を同じ数字の上に並べられます。今売った場合の手取り額、貸した場合に年間入る賃料、持ち続けた場合にかかる固定資産税や維持費。この3つを比べることで、「今は売らずに持っていた方がいい」という判断が、数字に裏づけられることがあります。
貸す場合でも、契約の組み立て方によっては契約時にまとまったお金が入る形があります。「貸すだけではまとまったお金が入らない」とは言い切れない理由もそこにあります。
動かさない選択にも、数字での根拠が要る
鑑定評価書は、正式にお出ししたあとで内容を差し替えることはできません。だからこそ、まずは概算の見立てをお伝えし、その数字を見てから、どう動くか、あるいは動かないかを決めていただきます。費用をかけて正式な評価書を作るかどうかも、見立てを見てから判断していただければ十分です。
ある遊休地の持ち主から相談がありました。数年前から手紙が届いていて、最近になって金額の提示も来るようになったとのことでした。相続の納税期限があるわけでも、急いでお金が必要なわけでもない。ただ「このままでいいのか」という感覚があり、動くべきか迷っていました。
概算の見立てを出してみると、届いていた金額は市場水準から大きくかけ離れているわけではありませんでした。ただ、今すぐ売る必要はないことも数字から見えてきました。持ち続けた場合の固定資産税の年額と、今売ったときの手取り額を並べると、持ち続けることのコストと、手放すことで得られるものを比較できます。数字が並ぶことで、「今は動かさない」という結論を、根拠のある判断として持てるようになります。
不動産鑑定の考え方については、不動産鑑定とは、後から時価を説明するための書類もあわせてご覧ください。
もちろん、土地はひとつずつ条件が違いますので、どの土地も同じようにうまくいくとは限りません。
動かさない判断も、数字から始まる
提案が届いているのに動けない。それは判断が遅いのではなく、自分の土地の価値を把握できていないだけかもしれません。
見立てが出ると、売る・貸す・持つという3つの道を数字で見比べられます。その結果、「今は動かさない」という結論になることも、根拠のある判断として持てます。どう動くか、あるいは動かないかは、その数字を見てから決めていただければ十分です。
よくある質問
Q. 遊休地に「買いたい人がいる」と連絡が来たとき、まず何をすればいいですか?
届いた連絡に返事をする前に、自分の土地が今いくらかを確かめることをお勧めします。相手が提示する金額は、相手側の採算に基づいた数字です。まず概算の見立てを持ってから話を進めても遅くはありません。この段階での費用はかかりません。
Q. 「持ち続ける」という選択は、どうやって数字で確かめられますか?
持ち続けた場合にかかる固定資産税や維持費と、今売った場合の手取り額と、貸せる見込みがある土地であれば年間賃料も合わせて並べます。この3つの道を同じ数字で見比べることで、「持つ」が数字に裏づけられた選択肢として見えてきます。どの選択が適切かは、見立てを出した後に判断してもらいます。
Q. 見立てを出してもらうのに、費用はかかりますか?
概算の段階では費用はかかりません。適正な価格がどのくらいの水準になりそうかを幅でお伝えした後、正式な鑑定評価書が必要かどうかを確認してから費用をご提案します。鑑定評価の費用は、物件や依頼の目的によりますが、1件あたり30万円から60万円程度になることが多いです。100万円以上になることもあります。
Q. 土地の判断を急かされているとき、どう動けばいいですか?
相続税の納税期限など法的な期限がある場合を除けば、返事を急ぐ必要はほとんどありません。急かされていると感じたときほど、まず自分の土地の見立てを出してもらうことをお勧めします。見立ては費用がかからず、その数字を見てから動くかどうかを判断しても遅くはありません。

