1枚の土地が、2〜4区画に分けられて市場に出てくる。業者買取のあとに起きることを簡単に言えば、こういうことです。
相続した土地について、不動産会社から買取の打診を受けたとき、「なぜこんなに安いのか」と感じることがあります。説明を求めても「市場の状況による」と言われるだけで、金額の根拠が分からない。そのため、どう判断すればよいか分からずにいる。そうした話を、ときどき耳にします。
買い取った会社がその土地をどのように扱うのかを知ると、提示された金額がどのように決まるのかも見えてきます。
買い取った会社は、土地を区画分譲して売り直す
業者買取(不動産会社が自ら土地を買い取る取引)では、会社は土地をそのまま利用するわけではありません。区画分譲などによって土地を商品化し、売却することを前提に買い取ります。
購入後は、まず測量から始めます。境界を確認し、何区画に分けられるかを判断します。次に、各区画に道路を整備し、水道や排水の管を引き込みます。住宅用地として整備したうえで、区画ごとに売り出します。
買い取る側は、こうした流れを最初から想定して価格を計算しています。例えば、1枚の土地を3区画に分けて売る場合、各区画の売却価格の合計から、測量・整備・許認可にかかる費用を差し引いた金額が、事業として手元に残ることになります。買取価格は、こうした見通しをもとに決まります。
土地が広い場合や、農地として使われていた場合には、農地転用や用途変更の手続きが必要になることもあります。こうした許認可が必要な土地では、商品化までに数か月以上かかるケースもあります。
商品化にかかるコストが差し引かれるため、買取額は低くなる
測量や道路の整備、水道・排水管の引き込み。これらの費用は、業者が土地を買い取ったあとに負担します。許認可の手続きが必要な土地では、それにかかる費用や時間も必要です。さらに、売り出すまでの間も固定資産税がかかり続けます。
業者は、こうした商品化にかかる費用や時間をあらかじめ計算し、最終的にいくらで売れるかを見積もったうえで、買取価格を決めています。つまり、提示額には、商品化にかかる費用があらかじめ差し引かれているのです。
提示額が低くなるのは、商品化にかかるコストや手間が価格に反映されているためです。その仕組みを知っておくと、提示額がどのように決まったのかを理解しやすくなります。
もちろん、土地の条件は一つひとつ異なるため、商品化にかかるコストも一律ではありません。測量が複雑な土地や、許認可の取得に時間がかかる土地では、差し引かれる費用も大きくなる傾向があります。
提示額を判断するには、先に適正価格の水準を知る
業者から提示された金額が適切かどうかを判断するには、まず、その土地の適正な価格の水準を知っておくことが有効です。
価格の水準が分かれば、提示額との差がどのくらいあるのかを確認できます。差が小さければ、提示額はおおむね妥当と考えられます。一方、差が思った以上に大きければ、商品化にかかるコストだけでは説明がつかない可能性もあります。比較できる数字があれば、判断するための手がかりになります。
また、土地の条件によっては、購入希望者を探す仲介のほうが、高く売れる可能性もあります。業者買取は早く確実に売れる方法である一方、仲介は売却までに時間がかかることがありますが、市場の相場に近い価格で売れる可能性があります。どちらが適しているかは、土地の条件や売り主の状況によって異なります。
適正な価格の水準を確認する方法の一つが、不動産鑑定評価(不動産鑑定士が根拠を示して価格を判定する手続き)です。正式な評価書を作成する前の段階でも、概算で価格の水準を把握することができます。私のところでは、まず価格の目安を幅を持たせてお伝えし、そのうえで今後の進め方を決めていただいています。
以前、相続で受け継いだ数百坪の土地について相談を受けたことがあります。不動産会社から買取の打診があり、提示された金額が相場より低いように感じる、というお話でした。先に概算の価格水準を確認したところ、提示額との差が見えてきました。その差が商品化にかかるコストで説明できる範囲であれば、提示額はおおむね妥当と考えられます。そうでなければ、仲介で売却する可能性を検討する余地があります。
仕組みを知ってから、提示額を見る
業者買取の提示額が低くなるのは、区画分譲などの商品化にかかるコストがあらかじめ差し引かれているためです。その仕組みを知ったうえで、適正な価格の水準と比べてみる。そうすることで、提示額を判断する手がかりが得られます。
売却に向けて動き出す前に、まず実際の数字をもとに価格を見極めておくことには、大きな意味があると思っています。
よくある質問
Q. 業者買取のあと、会社は土地をどのように利用しますか?
買い取った会社は、区画分譲などの商品化をして売り直すのが一般的です。測量・区画分割・道路の接続・埋設管の整備などをおこない、2〜4区画程度に分けて市場に出します。農地や用途が異なる土地では、転用・変更の手続きが加わることもあります。商品化の期間は土地の条件によって異なり、数か月から1年以上かかるケースもあります。
Q. 業者買取の価格が低くなるのは、どういうしくみですか?
業者が買い取ったあとに、測量・区画整備・道路の引き込みなど商品化のコストを負担するため、その費用が先に買取価格から差し引かれています。売り出すまでの期間の固定資産税や、許認可が必要な土地では手続き費用なども計算に入ります。測量が複雑な土地や許認可に時間がかかる土地では、差し引かれる額が大きくなる傾向があります。
Q. 先に不動産鑑定評価を取ると、何が判断できますか?
不動産鑑定評価では、その土地の適正な価格の水準を根拠とともに確認できます。水準が分かれば、業者から提示された買取額との差がどのくらいあるかが見えます。業者買取と仲介のどちらが自分の状況に合うかを、数字をもとに比べることもできます。正式な評価書を出す前の段階でも、概算の水準を確認することができます。
Q. 買取を打診された土地は、仲介では売れないのですか?
仲介で売れないということはありません。使いたい相手が見つかれば、業者買取より高く売れる見込みがある場合もあります。ただし仲介は買い手を探す時間がかかり、数か月から1年以上かかることもあります。急ぐ必要がある場合や買い手が見つかりにくい条件の土地では、業者買取のほうが現実的なことがあります。税務上の扱いについては、顧問の税理士にご確認ください。

