不動産鑑定とは、後から時価を説明するための書類

その土地の時価を出すことと、その時価を後に人に説明することは、別の仕事です。名古屋の葵不動産で私が引き受けている不動産鑑定は、「時価を人に説明する」後のほうにあたります。同族間で不動産を動かすとき、要るのは金額そのものより、その金額をどう決めたのかを書いた書面です。

価格の根拠が要るのは、説明する相手がいるとき

不動産鑑定評価とは、不動産の適正な価格を、不動産鑑定士が根拠を示して判定することです。不動産の鑑定評価に関する法律で、不動産鑑定士の独占業務と定められています。判定の過程と根拠は、鑑定評価書という書面に残ります。

価格の根拠を用意しておく場面は、だいたい共通しています。

  • 同族の会社どうしで土地を動かす。
  • 親から子へ持ち分を移す。
  • 持ち株会社に不動産を移して事業承継の形を整える。
  • 担保の価値を金融機関に示す。
  • 賃料の適正を示す。

どれも、当事者以外の誰かが後からその金額を見ます。

とくに増えているのが、相続が起きる前の資産の組み立てです。個人で持っている不動産を法人へ移す。収益性の低い土地を組み替える。こうした場面では、誰に、いくらで移すのかが先に決まります。その価格をどう置くかが、鑑定の論点になります。

不動産会社の無料査定は、その物件がいくらで売れそうかを見立てるものです。売る相手を探すための価格で、鑑定評価は、根拠を示して適正な価格を判定するものです。同族間の売買のように、市場で買い手を探さない取引では、この役割の違いがより重要になります。

売主と買主が身内であれば、金額は当事者どうしで決められます。自由に決められるぶん、あとから、なぜその金額にしたのかを聞かれます。鑑定評価のご依頼は、価格が分からなくて困っているというより、価格の決め方を残しておきたい、という動機で来ることが多いです。

同じ土地でも、目的が変わると根拠の重さが変わる

同じ物件を評価しても、依頼の目的によって、どこまで説明を尽くすかが変わります。それが費用の差にもそのまま出ます。

目的によって、聞かれることが違う

同族間の売買や事業承継であれば、読むのは主に顧問の税理士と、税務の当局です。担保の評価であれば、金融機関が読みます。ここまでは、評価書を提出するところまでが仕事になります。

係争が絡むと、その先が長くなります。相手方の弁護士から疑義や補充の求めが来る。裁判所から説明を求められる。相手方が出してきた評価書を確認する。こうした作業が、評価書を出したあとに続きます。手間が増えるぶん、費用も上がります。

1件あたりの鑑定報酬は、物件や依頼の目的によりますが、30万円から60万円程度になることが多いです。100万円以上になることもあります。だから一律の料金表は作らず、何のために価格の根拠が要るのかを先に伺います。期間は、ご依頼から評価書をお渡しするまで、おおむね1か月をいただいています。

目的を先に聞くのは、費用を決めるためだけではありません。そもそも鑑定評価まで要らない場面もあるからです。社内で数字の目安を持っておきたいだけなら、そこまでの書面は要りません。

税務の取り扱いは、税理士の領域

同族間の売買では、時価から離れた金額で動かすと贈与とみなされることがあります。ここをどう見るかは税理士の領域です。鑑定評価書があれば必ず認められる、とは限りませんので、税務上の取り扱いは顧問の税理士にご確認ください。

書面にする前に、数字を見てもらう

鑑定評価書は、判定の根拠が残る書面です。正式にお出ししたあとで、内容を差し替えることはできません。だから、いきなり評価書を作るところから始めません。

概算を見てから、進めるかどうかを決めていただく

ご相談をいただいたら、まず概算をお出しします。この段階では費用をいただきません。適正な価格がどのくらいの水準になりそうかを、幅でお伝えします。

その数字を見て、進めるかどうかを決めるのはご相談者と顧問の税理士です。その目的に鑑定評価まで必要なのかどうかも含めて、そこで決めていただきます。進めることが決まってから費用を確定し、実際の作業に入ります。

見送りになっても、それで終わりでかまわない

概算の段階で、この価格だと難しいので今回は見送ります、と言われることもあります。それで終わりでかまいません。無理に受けることはしていません。

もっとも、不動産はひとつずつ条件が違いますので、同じ目的のご依頼でも、必要な調査や費用は変わります。調査を進める途中で、確認が必要になることもあります。

判定する側に立ったまま、数字を作る

私は、不動産の売買だけを仕事にしているわけではありません。国土交通省の地価公示、愛知県の地価調査、名古屋国税局では、いずれも評価員を務めています。名古屋市のほか、県内複数の市町の固定資産税の基準となる鑑定評価を行っています。名古屋地方裁判所では民事調停委員をしています。

どれも、売り買いの当事者ではないところで価格を判定する仕事です。どちらか一方に肩入れして数字を動かしてしまえば、こうした仕事のほうが先に成り立たなくなります。売買の仲介もしますが、値段を決めてから売るので、売るために値段を決めることがありません。

まず、正しい値段を知ってから決める。同族間で不動産を動かす話が出たときも、この順番は変わりません。

根拠のある価格が必要になったときは、ご相談ください。

不動産鑑定について相談する

まず概算をお出しします。その数字を見てから、進めるかどうかを決めていただけます。

お電話でのご相談
052-950-7001

よくある質問

Q. 不動産鑑定と無料査定は、何が違いますか?

無料査定は、その物件がいくらで売れそうかという見立てで、売る相手を探すための価格です。不動産鑑定は、不動産鑑定士が適正な価格を根拠を示して判定し、その過程を鑑定評価書に残します。当事者以外の人が後から見る場面では、この書面が要ります。

Q. 不動産鑑定の費用は、どのくらいかかりますか?

1件あたりの鑑定報酬は、物件や依頼の目的によりますが、30万円から60万円程度になることが多いです。100万円以上になることもあります。同じ物件でも、係争が絡むと相手方や裁判所への説明が続くため、手間が増えて費用も上がります。何のために価格の根拠が要るのかを先に伺ってから、お見積りします。

Q. 不動産鑑定を頼んでから、評価書が出るまでどのくらいかかりますか?

ご依頼から評価書をお渡しするまで、おおむね1か月をいただいています。調査を進める途中で、確認が必要になることもあります。埋蔵文化財の包蔵地に当たる、聞いていなかった建物がある、法令上の適合に疑いがある、といった場合です。そのときは一度お戻しして、どう扱うかを相談してから進めます。

Q. 同族間で不動産を売買するとき、価格の根拠はどう残しますか?

不動産鑑定士による鑑定評価書であれば、いくらと判定したかだけでなく、どういう資料をもとにどう考えたかまでが書面に残ります。後から第三者に説明するときの材料になります。ただし、税務上どのように扱われるかは別の話ですので、顧問の税理士にご確認ください。

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