葵不動産の長谷川です。不動産鑑定士として、名古屋で価格を判定する仕事をしています。ご相談をいただくとき、最初に多いのが「こういうことも、お願いできるものなんでしょうか」という一言です。頼めるかどうかが分からないまま、しばらく抱えたままにしていた、という方がよくいます。
頼むものが決まっていなくても、相談は始められる
土地のことだから土地に詳しい人、建物のことだから建物に詳しい人。相談先をそう選ぼうとする方が多いのですが、私が最初に伺うのは、その不動産をどうしたいのかという目的のほうです。
同じ一枚の土地でも、何のために価格が要るのかで、お渡しするものが変わります。親族の間で売り買いするなら、その値段でよかったと後から説明できる形が要ります。相続で兄弟の間の分け方を決めるなら、みんなが同じ数字を見て話せることが先です。地代や家賃を改定したいなら、今の賃料と適正な賃料の差がどれだけあるのかを出します。会社の資産を帳簿上で見直す場面や、裁判で価格そのものが争点になっている場面でも、要るものはそれぞれ違います。
目的が違えば、見るところも変わります。売る話なら、いつまでに現金にしたいのか。貸す話なら、相手が長く続く先かどうか。先に業務の名前を選んでしまうと、この見方のほうが後回しになります。
ご相談の多くは、お客様や不動産会社からのご紹介、税理士や弁護士などの士業の方からのご紹介が多いです。ご紹介いただいた時点で方向性が決まっていない場合も多くあります。困っていることをそのまま話していただければ、取り得る選択肢を提示したうえで、ご依頼者様と一緒に検討を進めさせていただきます。
価格を出すことと、その価格を誰かに説明することは違う
頼めるかどうかを分ける線は、実は分かりやすいところにあります。その数字を、自分の中だけで使うのか。それとも、自分以外の誰かに説明するのか。ここで、要るものがはっきり変わります。
不動産鑑定評価とは、不動産の適正な価格を、不動産鑑定士が根拠を示して判定することです。不動産鑑定士の独占業務です。判定の過程と根拠は、鑑定評価書という書面に残ります。
手元で判断するだけなら
売るかどうかをまだ迷っている。とりあえず、いくらぐらいなのかを知っておきたい。持ち続けた場合と手放した場合を、家族の中で一度比べてみたい。こういう段階なら、概算で足ります。
概算は無料でお出ししています。数字を見て、しばらく動かさないという結論になることもあります。それで終わりでかまいません。
誰にも見せないのであれば、書面に残す必要がありません。ここで鑑定評価まで進めても、使い道のない書面が手元に残るだけになります。
第三者に説明するなら
一方で、その数字を自分以外の誰かに見せる場面では、概算では足りなくなります。親族や関連会社の間で不動産を動かすとき。相続で分け方を決めるとき。地代や家賃を改定したいとき。会社の資産を時価に見直すとき。裁判で価格が争点になっているとき。
どれも、その金額に納得してもらう相手が、自分のほかにいます。相手は、金額が妥当かどうかより先に、どういう理由でその金額になったのかを見ます。だから、判定の過程まで書面に残る鑑定評価が要ります。
相手が誰かによって、どこまで求められるかも変わります。家族の間で分け方を決めるだけなら、同じ数字を見て話せれば足りることもあります。税務署や裁判所が相手になると、その数字に説明が付いているかどうかで、扱いが変わります。
自分だけが見るのか、誰かに見せるのか。ここで線が引けます。
引き受ける前に、引き受けられるかを確かめる
頼めるかどうかは、私の側でも先に確かめています。目的を伺って、まず概算を出す。この段階では費用をいただきません。適正な価格がどのくらいの水準になりそうかを、幅でお伝えします。その数字を見て、ご相談者と顧問の税理士に、進めるかどうかを決めていただきます。
先に出す理由は、鑑定評価書が判定の根拠が残る書面だからです。正式にお出ししたあとで、内容を差し替えることはできません。だから、根拠として説明できる範囲を、先に確かめてから受けます。
費用は目的によって変わります。同じ物件でも、係争が絡むご依頼では、相手方から疑義や補充の求めが来ることがあり、その分だけ手間が大きくなるためです。だから一律いくらではなく、何のために価格の根拠が要るのかを伺ってから、お見積りします。ご依頼から評価書をお渡しするまでは、おおむね1か月をいただきます。
もちろん、不動産はひとつずつ条件が違いますので、どのご相談も同じように運ぶとは限りません。それでも、頼めるかどうかを一人で決めておく必要はありません。困っていることを話していただければ、こちらで見立てます。
よくある質問
Q. 不動産鑑定士に相談するとき、何を決めてから連絡すればいいですか?
A. 何も決まっていない状態で差し支えありません。伺うのは、その不動産をどうしたいのかという目的です。同じ土地でも、親族間の売買なのか、相続の分け方なのか、賃料の改定なのかで、お渡しするものが変わります。ご相談は税理士や弁護士からのご紹介が中心で、その時点では依頼内容が決まっていないことのほうが多いです。
Q. 価格を知りたいだけの場合でも、鑑定評価書は必要ですか?
A. 手元で判断するだけなら概算で足ります。概算は無料でお出ししていて、この段階では費用をいただきません。数字を見て動かさないと決めても、それで終わりでかまいません。鑑定評価書が要るのは、その価格を自分以外の誰かに説明する場面です。判定の過程と根拠が書面に残るため、相手が納得する材料になります。
Q. 不動産鑑定士に依頼できないのは、どんなことですか?
A. 税務の判断は税理士、法律の判断は弁護士の領域です。私がお出しできるのは、根拠のある価格までです。例えば鑑定評価書があっても、その価格が税務上どう扱われるかは顧問の税理士にご確認ください。認められないこともあります。価格を判定するところまでと、その先の判断は、分かれています。
Q. 不動産鑑定を依頼してから、評価書を受け取るまでどれくらいかかりますか?
A. ご依頼から評価書をお渡しするまで、おおむね1か月をいただきます。調査を進める途中で、確認が必要になることもあります。遺跡が埋まっている可能性のある区域だったり、聞いていなかった建物が見つかったりする場合です。そのときは一度お戻しして、どう扱うかをご相談してから進めます。

