相続した土地に、複数の不動産会社から「うちで買い取ります」という連絡が届いた。提示された価格を確認すると、想定していた金額よりかなり低かった。なぜこんな価格なのかと聞いてみると、「これが市場の相場です」という返答だった。そういった経緯でご相談に来られる方が、少なくありません。
業者が提示する買取価格が、一般の買主に売る場合より低くなるのには、理由があります。悪意ある値引きではなく、業者の採算の作られ方が価格に反映されているからです。
仲介と業者買取は、土地を買う人の採算が根本的に違う
仲介で土地を売る場合、最終的にその土地を使う人が買い手になります。自分の家を建てる方、事業用の建物を作る会社など、その土地で何かをしたい方が相手です。買い手は「この土地で何かをする」ために買うので、採算はその用途に合っているかどうかで決まります。
業者買取は違います。
買い取った会社が区画分譲などで商品化して売ることを前提にしているため、買取価格はその後の販売を見越した採算で決まります。
業者にとって、その土地は自分が使うものではなく、手を入れて売り出すものです。手を入れるコストと売り出すまでの時間を、最初から買取価格に折り込む必要があります。その折り込みの分だけ、価格が抑えられます。
価格から引かれるのは、何のコストか
業者が土地を買い取ってから売り出すまでには、いくつかの工程があります。
まず測量と境界確定です。特に広い土地や、隣地との境界線が曖昧な土地では、確定測量だけで数十万円から百万円以上かかることがあります。次に、土地を何に使えるかを調べます。法令上の用途制限、道路への接し方、上下水道の引き込みが可能かどうかを確認したうえで、どう区画を分けるかを決めます。
整地や造成が必要な場合は、さらに費用がかかります。地盤改良や擁壁の設置が必要な土地では、金額が大きくなります。そして販売に入れば、広告費と仲介手数料が乗ります。売れるまでの期間が長くなれば、その間の固定資産税や管理コストも業者が負担します。
これらの費用と時間を見込むため、その分が買取価格に反映されます。「利益を多く取ろうとして安く買う」というより、「商品化にかかるコストをあらかじめ折り込まないと採算が合わない」という事情です。土地の形や接道状況、法令上の制限によって商品化コストは土地ごとに異なります。それが、同じ地域の土地でも業者によって提示価格が変わる理由でもあります。
安さは悪意ではなく、後から売る前提が作る価格差
業者買取のメリットは、速さと確実さにあります。仲介では買い手が見つかるまで時間がかかりますが、業者買取はその場で現金化の目途が立ちます。相続税の納税期限が迫っているときや、管理できない土地を早く手放したいときに、現実的な選択肢になります。
一方、一般の買主を探して売る場合より低くなることがあります。商品化のコストを業者が先に負担する分、その費用が価格に反映されているからです。
「急ぐなら業者買取、ゆっくり売れば価値が出る」。私がよく口にする言葉です。どちらが正解かは、相続人の置かれた状況によって変わります。
今の土地の価格を根拠のある数字として先に把握しておけば、業者から提示された価格が仲介売却と比べてどのくらい違うのかが分かります。その差を見てから選ぶのと、仕組みを知らずに選ぶのとでは、後から振り返ったときの納得感が変わります。
もちろん、土地はひとつずつ条件が違いますので、どの土地も同じようにうまくいくとは限りません。それでも、価格の仕組みを知ったうえで選ぶことには、意味があると思っています。
よくある質問
Q. 業者買取の価格は、市場価格の何割くらいになりますか?
土地の条件によって大きく異なりますが、一般の買主に売る場合の60〜80%程度になることが多いとされています。ただし、商品化にかかるコストが高い土地(整地・造成が必要、形状が複雑、接道が限られるなど)ではさらに低くなることもあります。正確な数字は土地ごとに違いますので、まず土地の適正価格を把握したうえで比較するのが確かな方法です。
Q. 業者買取と仲介売却では、価格の決まり方がどう違いますか?
仲介売却では、その土地を実際に使う買主が「この価格なら使いたい」と考える金額が基準になります。業者買取では、土地を商品化して再販するコストと利益を見込んだ採算が基準になります。仕組みが違うため、同じ土地でも価格水準が変わります。
Q. 買取の打診を断っても、問題はありませんか?
断っても問題はありません。買取の打診は業者側からの提案で、受ける義務はありません。「今は決めたくない」「他の選択肢も検討したい」という場合は、そのまま断ることができます。急いで決める必要がない状況であれば、仲介での売却や賃貸という選択肢と比較してから考えるのが得策です。
Q. 業者によって買取価格がバラバラなのはなぜですか?
商品化の方法が業者によって異なるためです。区画分譲が得意な業者、そのまま事業用地として売り出す業者、建物付きで売ることを前提とする業者など、それぞれ事業モデルが違います。事業モデルによって商品化コストの見積もり方が変わるため、同じ土地でも提示価格が変わります。複数の業者に見積もりを依頼して比較するのが、現実的な手順です。
関連記事:土地の値段を決めているのは、買う人の採算
関連記事:相続した土地に、営業の連絡が続いたときは
関連記事:相続した工場跡地、あわてて全部売る前に

