親御さんが遺した土地を相続した。それから間もなく、見知らぬ会社から手紙が届き始めた。名古屋の土地なのに、自分は遠くに住んでいる。連絡は止まらない。なぜ、これほど届くのか。
理由は仕組みとして説明できます。そして、遠方に住んでいるという事情が、なぜ連絡の数をさらに増やすのかも、同じように説明できます。
相続登記から1か月で、業者は所有者の名前を知っている
不動産の登記情報は、誰でも取り寄せることができます。法務局に申請すれば、どの土地が誰の名義か、現在の所有者がどこに住んでいるかを確認できます。インターネット経由でも申請できるように整備されており、これは法律上、公開されている情報です。
この仕組みを利用し、相続登記された物件を市・区・町ごとに全件調べてデータにまとめ、不動産会社に販売するサービスがあります。不動産会社はそのデータを月額で購入し、新しい所有者へ一斉に手紙を出します。登記が完了すると情報が更新されるため、相続の手続きを終えてから数週間のうちに届き始めることがあります。
手紙の文面は、だいたいこうです。「うちのお客様で、この土地を購入したいという方がいらっしゃるのですが、お話できませんか」。
この文面は、実際に購入を希望している方がいなくても出せます。連絡を入れておき、話が動き出してから買い手を探せばいい。まとまらなければ「今回はご縁がありませんでした」で終われます。
なぜ遠方の所有者に連絡が増えるのか
登記情報には、所有者の現住所も含まれます。名古屋の土地を相続しても、所有者が離れた場所に住んでいることは、データを見ればすぐに分かります。
遠方に住んでいると、「土地を使う予定がないのではないか」という前提が働きやすいようです。連絡を送る側からすると、話を聞いてもらえる可能性がある相手として映ります。まだどうするか決めていない方に対して、複数の会社から同時に連絡が入ることは珍しくありません。
現地を見ないまま、金額だけで判断することの危険
遠方に住んでいると、土地の現状を自分の目で確かめに行けないという問題があります。
相続した土地が今どういう状態にあるかは、行ってみなければ分かりません。長年手入れをしていなければ雑草が広がっていることもあります。フェンスや塀が傷んでいるかもしれません。隣地との境界が、書類上は定まっていても、現地では曖昧になっているケースも珍しくありません。
こうした状況が分からないまま、届いた金額だけを頼りに判断することになります。現地の状態を知っている相手と、書類しか見ていない側では、持っている情報がまったく違います。
現地を確認しないと見えないこと
境界が明確でない土地は、売却の前に測量と境界確定が必要になることがあります。時間がかかる作業で、相続税の納税期限(相続の発生から10か月以内)との兼ね合いで、焦りが生まれることもあります。
また、雑草の撤去や廃材の処分にコストがかかる場合もあります。土地の状態を確かめずに「このくらいの金額でお客様がいます」と言われても、提示された数字が妥当かどうかを、現地を知らないまま判断するのは難しい状況です。
もちろん、土地はひとつずつ条件が違いますので、どの土地でも同じような問題が起きるわけではありません。ただ、現地を確認していない状態で動き出すと、後になって思っていた条件と違った、という話になることがあります。
動く前に、価格の根拠を自分で持っておく
手紙や電話が届いても、すぐに返事をしなければならないわけではありません。動く前に、その土地が今いくらなのかを、根拠のある形で先に確認することができます。
私は不動産鑑定士です。土地の適正な価格を、根拠を示して判定するのが仕事です。不動産鑑定は全国に伺っています。遠方にお住まいで、名古屋に土地がある方からのご相談も、同じように受け付けています。
まず、先に概算をお伝えします。適正な価格がどのくらいの水準になりそうかを、幅でお伝えします。その数字を見てから、売るかどうか、どう売るかを考えていただければ十分です。概算の段階で「この価格では難しいので今回は見送ります」となったとしても、それで構いません。
価格の根拠を先に持っていれば、届いた提示額を見たときに自分なりの基準で考えられます。理由のはっきりしないまま「いまお決めください」と言われたとき、立ち止まれるようになります。
先に知っておけば、同じ状況でも違う
相続した土地に連絡が来ること自体は、今後も続きます。登記情報は公開されており、そのデータが販売される仕組みは動き続けているからです。
変えられるのは、受け取る側の状態です。価格の根拠を先に持っていれば、何かを提示されたときに、自分の基準で判断できます。遠方に住んでいても、現地をまだ確かめていなくても、先に数字があれば違います。
よくある質問
Q. 相続登記をすると、なぜすぐに業者から手紙が届くのですか?
不動産の登記情報は、誰でも取り寄せられる公開情報です。相続登記された物件を市・区・町ごとに全件調べてデータにまとめ、不動産会社に販売するサービスがあります。会社がそのデータを購入し、新しい所有者へ一斉に手紙を送ります。登記が完了すると情報が更新されるため、手続きを終えてから数週間で届き始めることがあります。
Q. 遠方に住んでいる相続人は、特に連絡が増えるのですか?
登記情報には所有者の現住所が含まれるため、土地と所有者の住所が離れていることは、データを見ればすぐに分かります。遠方にお住まいの場合は「土地を使う予定がないのでは」という前提が働きやすく、連絡が集中しやすくなります。複数の会社から同時に手紙が届くことも珍しくありません。
Q. 「購入希望のお客様がいます」という手紙は、信頼できますか?
そうした手紙は、実際に購入を希望している方がいない段階でも出せる文面です。連絡を入れておき、話が動き出してから買い手を探すことも可能なため、まず接点を持つことを目的にしているケースがあります。届いた金額に根拠があるかどうかは、別途確かめる必要があります。
Q. 相続した土地の適正な価格は、現地に行かなくても確認できますか?
不動産鑑定の評価には、鑑定士が現地を訪問することが含まれます。葵不動産では不動産鑑定は全国に対応しており、土地が遠方にある場合でも伺います。売買の仲介は名古屋市を中心とした愛知県が中心ですが、「その土地が今いくらか」を先に知りたいという段階からのご相談は、遠方の土地でも受け付けています。

