土地を貸す場合、収入は毎月の賃料だけだと思っている方も少なくありません。たしかに、土地を貸す場合の収入は、毎月の賃料が基本です。
ただ、事業用に土地を貸す場合には、契約時にまとまったお金が入る契約もあります。この違いを知っておくと、「売るか、貸すか」を考えるときの選択肢が変わってくることがあります。
「貸す」というと、毎月の賃料だけのイメージがある
土地を売れば、まとまった現金が一度に入ります。一方、貸せば、毎月賃料を受け取る。そのように考えて、どちらにするかを判断している方がいます。
たとえば、相続税の納付期限が迫っていて、すぐに現金が必要な場合には、「売るしかない」と考えてしまうかもしれません。
ただ、土地を貸す場合でも、契約の内容によっては、契約時にまとまったお金を受け取れることがあります。
「売るなら一括、貸すなら毎月」という単純な比較だけではなく、契約時に入るお金と、その後の賃料まで含めて考えることで、別の選択肢が見えてくることがあります。
契約時にまとまったお金が入る仕組み
事業用に土地を貸す場合、契約時に一時金が発生することがあります。
ひとつは保証金です。借りる側が担保として先に預けるお金で、契約期間中は貸す側が預かります。賃料の数か月から1年分を超える規模になることもあります。契約が終わるときに返還されるお金であり、賃料収入とは性質が異なります。
次に、権利金、礼金、保証金の償却などです。契約時に受け取るものの、原則として返還されないお金(掛け捨ての性質を持つ収入)です。権利金や礼金は、土地を貸すことへの謝礼や、借地権などの権利を設定する対価として支払われるため、契約終了時も返還されません。また、保証金の一部を契約条件として「償却(返さない)」とするケースもあります。これらは賃料収入や一時的な利益として扱われれるお金で、手元に残るものとなります。
最後に、建設協力金(けんせつきょうりょくきん)です。借りる側が建物の建築費相当を先に預け、その後の賃料から少しずつ差し引いて返してもらう形です。ロードサイドの飲食店や薬局など、借りる側が自分で建物を建てる事業用の賃貸でよく使われます。このお金は基本的に建物建築費となるため、手元にお金は残りません。
金額は土地の規模や入居する事業者の種類によって変わります。
一時金を納税資金に充てる考え方と、注意点
相続した土地を持つ方から「相続税の納期に間に合わせたい」という相談を受けることがあります。契約時の一時金が手元に入る時期と納税のタイミングが合えば、売らなくても納税できる場合があります。
ただし、一時金があれば必ず間に合うとは限りません。入居する業種の条件が合うかどうか、土地の立地と形状が事業用に向いているかどうか、そして入居希望者がいるかどうかによって、実際に受け取れる一時金の規模と時期が変わります。
また、受け取った保証金が税務上どのように扱われるかは、税理士の領域です。収入として計上されるかどうかは、顧問の税理士にご確認ください。
もちろん、土地はひとつずつ条件が違いますので、「事業用に貸せれば一時金が入る」と単純に決まるわけではありません。まず今の土地の状況と立地を見てから、事業用の賃貸が成り立つかどうかを確かめることが先になります。
貸す道も、数字で並べてから選ぶ
売る・貸す・持つを選ぶとき、賃料の月額だけで判断すると全体の数字が見えません。10年間の賃料の累計と、売った場合の手取りを並べる。一時金がある場合は、それを加えて比べる。そうした計算が出てきてから、どれが自分の状況に合っているかを選べます。
私は名古屋の葵不動産で、土地の価格を判定しています。売買の仲介もします。ただ、その前に必ず価格を判定します。まず今の土地がいくらかを確かめ、売る・貸す・持つをそれぞれの数字で並べます。
よくある質問
Q. 保証金と建設協力金は、何が違いますか?
保証金は、借りる側が担保として先に預けるお金です。賃料の未払いなどに備えて貸す側が預かり、契約終了時に返還されます。建設協力金は、借りる側が建物の建築費相当を先に預け、その後の賃料から差し引いて返してもらう形です。どちらも契約時に受け取るお金ですが、性質が異なります。
Q. 土地を事業用に貸すとき、どんな業種が入ることが多いですか?
ロードサイドの飲食店・薬局・コンビニエンスストアなど、自動車での来店を前提とした事業者が多い傾向にあります。土地の立地・形状・接道状況によって向いている業種が変わります。どんな業種が成り立つかは、土地の場所と条件を見てから判断します。
Q. 相続税の納期が迫っているとき、売らずに間に合わせる方法はありますか?
事業用の賃貸で契約時の一時金が入る場合、売らずに納税できることがあります。ただし、入居する業種が合うかどうか、希望者がいるかどうかによって、受け取れる金額と時期が変わります。相続税の申告や延納・物納の手続きは税理士の領域ですので、顧問の税理士と並行してご相談ください。
Q. 土地を貸すと、固定資産税はどうなりますか?
土地を貸しても、固定資産税の納税義務は所有者に残ります。事業用に貸す場合、住宅用地のような固定資産税の軽減措置(小規模住宅用地の特例等)は適用されないケースがあります。税務上の扱いは顧問の税理士にご確認ください。

