郊外のロードサイドに建つ店舗の多くは、出店企業が自分で土地を所有しているわけではありません。道沿いの薬局も、回転寿司も、コンビニも、その建物の下には地主が持つ土地があります。
「土地を貸す」といっても、いくつかの形があります。土地だけを貸す場合と、建物まで建てて一緒に貸す場合とでは、お金の受け取り方が変わります。どの形を選ぶかによって、毎月の賃料の水準だけでなく、契約時にまとまった資金が入るかどうかも変わってきます。
郊外の店舗に土地を貸しているのは、地主
私は不動産鑑定士として、愛知県を中心に土地の売買や賃貸の相談を受けています。ロードサイドの土地活用についても、地主の方から相談をいただくことがあります。
郊外のロードサイドにある薬局や回転寿司の店舗は、土地だけを借りて建てている場合と、土地の所有者が建物まで建てて貸している場合があります。コンビニは土地だけを借りる形が比較的多いです。
同じ「道沿いに店舗が建っている」状態でも、地主と出店企業の関係はケースによって異なります。外から見ただけでは分かりませんが、地主の側は自分が選んだ形で貸しています。
国道や幹線道路に面した土地は、出店企業にとって集客できる場所です。郊外型のチェーン店舗は、土地を購入するより借りて出店する形を選ぶことが多く、地主には安定した賃料が入り続けます。出店企業が賃料を払い続けるのは、その土地を使い続けたい事業上の理由があるからです。
地主から見た3つの貸し方
「土地を貸す」という形には、大きく3つあります。それぞれ、建物を誰が建てるか、お金がいつどのように入るかが変わります。
更地を貸す(土地のみの賃貸借)
土地だけを貸し、建物は出店企業が自ら建てる形です。コンビニや一部の飲食チェーンでは、この形が広く使われています。
地主は土地を貸すだけなので、初期に建物を建てる費用はかかりません。毎月安定した地代が続きますが、建物は出店企業の所有です。事業用定期借地権(借地借家法第23条)を設定することで、契約期間が満了したときに更地で返してもらえる形にできます。
建て貸し(建物を建てて丸ごと貸す)
地主が自ら建物を建て、土地と建物をセットで出店企業に貸す形です。
地主から見ると、建物を建てる費用が初期にかかります。ただ、建物つきで貸すため、土地だけを貸す場合より賃料の水準が上がることがあります。建物は地主の所有なので、テナントが退去したあとも手元に残り、次の使い道を自分で決められます。
建設協力金方式(保証金を受け取って建てる)
建て貸しの一形態です。地主が建物を建てる際に、出店企業から建設費に相当する保証金(建設協力金)を先に受け取り、その後の毎月の賃料から少しずつ差し引いて返していく形です。
契約時にまとまったお金が入る点が特徴で、薬局や飲食チェーンとの契約で使われることがあります。相続した土地をこの形で貸す場合、一時金で手元の資金を整えてから長期の賃貸に入れます。
| 更地を貸す | 建て貸し | 建設協力金方式 | |
|---|---|---|---|
| 建物を建てるのは | 出店企業 | 地主 | 地主 |
| 建物の所有者 | 出店企業 | 地主 | 地主 |
| 契約時の一時金 | 基本なし | 基本なし | あり(建設協力金) |
| 毎月の賃料 | 地代 | 地代+建物賃料 | 地代+建物賃料(協力金分を差し引く) |
貸す形によって、お金の受け取り方が変わる
地主から見て大きく違うのは、いつ、どのくらいお金が入るかです。
更地を貸すだけなら、初期費用は少なく、毎月安定した地代が続きます。建て貸しにすると、初期に建築費がかかる分、賃料水準が上がる場合があります。建設協力金方式では、契約時の一時金の授受により、納税資金が賄えるケースもあります。
ただし、土地はひとつずつ条件が違いますので、どの土地も同じようにうまくいくとは限りません。出店企業の要望、土地の広さや形状、地主の資金状況によって、どの形が合うかは変わります。
私が相談を受ける際は、まずその土地で何ができるかを数字で確かめます。売る・貸す・持つのどれを選ぶかは、その数字を見てから決めていただければ十分です。賃料の水準も、契約終了後の建物の扱いも、事前に数字の上に並べてから考えることができます。
よくある質問
Q. コンビニの店舗は、土地から自分で所有しているのですか?
コンビニは、土地だけを地主から借りて、建物を自ら建てる形が比較的多いです。土地を購入するより借りる形のほうが、出店にかかる初期費用を抑えられます。ただしチェーンや物件によって異なるため、すべてのコンビニが同じ形というわけではありません。物件ごとに地主との契約内容が違います。
Q. 建て貸しをすると、建物は地主のものになりますか?
建て貸しでは、地主が建物を建てて貸しますので、建物の所有者は地主です。テナントが退去した後も建物は地主の手元に残ります。次の出店企業に貸すことも、用途を変えて使うことも、建物ごと売却することも選べます。
Q. 建設協力金がある場合、契約時にまとまったお金が入りますか?
建設協力金方式では、契約時に出店企業から建設費相当の保証金を受け取ります。金額は建物の規模や出店企業との交渉によって変わりますが、数千万円規模になることがあります。その後、毎月の賃料から少しずつ差し引く形で返済が続きます。相続した土地をこの形で貸す場合、まず契約時の資金で納税を済ませ、長期の賃貸に入るというケースがあります。
Q. 貸す相手は、賃料の高さだけで選んでよいですか?
賃料の高さだけで決めると、後から困ることがあります。借りている相手の事業が安定しているかどうかで、その土地の長期的な賃料収入に影響が出ます。全国に多数の店舗を持つ大手チェーンと、個人が運営する小さな店とでは、継続性が異なります。貸す相手の信用力が、そのまま土地の安定的な収益につながります。

