相続した土地の売り方は、順番と期限で決まる

相続登記を済ませたころから、不動産会社から手紙や電話が届き始めます。「購入を希望されている方がいます」「アパートを建てて有効活用しませんか?」

連絡は来るのに、誰に相談すればいいのか分からず、何を信じればいいのか迷ってしまう。そうしているうちに、相続税の申告と納税の期限だけが近づいてきます。相続した土地は、何から手をつけるかで、その後に選べる方法が変わります。

相続した直後に、なぜ手紙と電話が集まるのか

不動産を相続すると、亡くなった方から相続人へ名義を移す相続登記をします。この登記が、連絡が集まり始めるきっかけの一つになっています。

登記の情報は、誰でも調べられる

不動産の登記は、法務局に行けば、あるいはインターネットでも誰でも取ることができます。その情報を市や区、町ごとに全件調べてまとめ、不動産会社向けに提供しているサービスがあります。会社は月額料金を払ってそのデータを使い、名義が変わったばかりの所有者へ一斉に手紙を送ります。相続人が遠方に住んでいる場合には、さらに多くの連絡が届くこともあります。

手紙の内容は、だいたい似ています。「うちのお客様で、この土地を購入したいという方がいらっしゃるのですが、お話できませんか」。実際には、買い手がまだ決まっていない段階でも、このような手紙を出すことはできます。話が始まってから買い手を探し、まとまらなければ今回はご縁がなかった、という形で終わることもあります。

こうした仕組みがあるため、相続後に多くの連絡が届くこと自体は珍しいことではありません。

金額が先に出ると、話が進み始める

「うちなら、このくらいの金額で買いたいお客様がいます」。このように、先に金額を示されることもあります。数字が出ると、親族を集めて話し合いが始まります。相続人が何人もいれば、日程を合わせるだけでも時間がかかります。

そこまで話が進んだあとで、やはりその金額では、となると、一度進めた話を戻すことになります。提示された金額に根拠があるのかどうかは、話を進める前に確認できます。

何から手をつけるかで、選べる道が変わる

相続した土地でよくあるのは、連絡が来た順に話を聞き、そのまま話が進んだところで決めるという流れです。この順番を少し変えるだけでも、途中で考え直しやすくなります。

先に、値段の目安を知る

私は不動産鑑定士です。名古屋の葵不動産で、土地の価格を判定する仕事をしています。売買の仲介も行いますが、その前にまず価格を確認します。値段を見てから売るかどうかを考えるので、売ることを前提に値段を決めるわけではありません。

先にお伝えするのは、このくらいからこのくらいまで、という価格の幅です。その幅が分かっていれば、届いた手紙に書かれている金額が高いのか、安いのか、自分でも判断しやすくなります。

根拠を書面に残す鑑定評価(不動産の適正な価格を、不動産鑑定士が根拠を示して判定するもの)が必要になる場合もありますが、その前の段階では概算で足りることもあります。

3つの道を、金額で見比べる

価格の幅が分かったら、売る・貸す・持つを数字で比べます。売るなら手元にいくら残るのか。貸すなら毎月どのくらい入るのか。持ち続けるなら固定資産税がどのくらいかかるのか。

同じ土地でも、場所によって向いている使い道が違うことがあります。店舗に向いている部分と住宅に向いている部分に分けられ、それぞれ売れる価格が違う土地もあります。土地全体をひとまとめに扱うか、分けて扱うかによって、結果が変わることがあります。

順番 やること 決まること
1 その土地が今いくらか、幅で出す 届いた金額が妥当かどうかの目安
2 売る・貸す・持つを同じ数字で並べる それぞれ、どのくらいの金額になるか
3 決めてから、動き出す 途中で考え直しやすくなる

納税の期限から、逆算して決める

相続には期限があります。この期限は、急いで決めるためではなく、いつまでに何をする必要があるのかを逆算するために使います。

起算日は、亡くなったことを知った日の翌日から

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日、通常は亡くなった日の翌日から10か月以内と決まっています。納税も同じ期限までです。

土地を売って納税資金を用意する場合は、この10か月の中に、買い手を探す時間と、引き渡しまでに必要な手続きの時間も含まれます。

引き渡しまでにかかる時間を、先に見ておく

売ると決めても、すぐに現金になるとは限りません。境界の立会いや測量が必要な土地、建物の法令上の扱いを整理してから引き渡す土地では、契約から引き渡しまでに時間がかかります。この時間を考えずに買い手探しから始めると、期限が近づいたときに選べる方法が少なくなります。

そうなったときに、選べる方法として残るのが、現況のまま不動産会社に買い取ってもらう業者買取です。業者買取が市場で売るより安くなりやすいのは、買い取った会社が、その後に区画分譲(まとまった土地を複数の区画に分けて売り出すこと)などを行い、商品として売ることを前提にしているためです。早く確実に現金化しやすい代わりに、測量や整備、売れるまでの費用や時間が価格に反映されます。

貸す方法も、最初から外さずに考えます。事業用定期借地(事業用の建物を建てる目的で、期間を定めて土地を貸す契約)などでは、契約時の一時金によって納税資金を用意できる場合もあります。毎月の賃料だけを見て、貸すのでは間に合わないと先に決めてしまうと、こうした方法を検討できなくなります。

もちろん、土地は一つひとつ条件が違うため、どの土地でも同じように進められるわけではありません。それでも、何かを決める前に一度、数字を確認しておくことには意味があると思っています。

なお、相続税評価額(路線価)をもとにした税額の計算や、特例が使えるかどうかは税理士の領域です。税務上の取り扱いについては、顧問の税理士にご確認ください。

急ぐお金と待てるお金は、分けられる

相続した土地は、先に価格の幅を出しておくと、その後の判断がしやすくなります。届いた手紙の金額が妥当かどうかも、売る・貸す・持つのどれが合っているかも、そこから考えられます。

期日までに必要なお金と、時間をかけてもよいお金を分けて考える。土地の価格が分かっていれば、こうした整理もできます。10か月という期限があっても、持っている土地のすべてを同じタイミングで動かさなければならないわけではありません。

営業の連絡が続き、どう決めればいいのか迷っている。そんな状況でも、まだ何も決めていない段階で構いません。

売る・貸すを決める前に、まず今の価格を確認するところからご相談ください。

まずはご相談ください

まだ決めていない段階でも構いません。その土地が今いくらで、どういう選び方があるかを、中立にお伝えします。

お電話でのご相談
052-950-7001

よくある質問

Q. 相続した土地は、まず誰に相談すればいいですか?

売り先を探す前に、その土地が今いくらなのかを確認できる相手に相談する方法があります。私の場合は、まず無料で概算をお出しし、その数字を見てから依頼するかどうかを決めていただきます。根拠を書面に残す不動産鑑定評価が必要な場合、鑑定報酬は物件や依頼の目的によりますが、30万円から60万円程度になることが多いです。税額の計算については、税理士にご確認ください。

Q. 相続した土地を売るのに、どれくらい時間がかかりますか?

土地の条件によって大きく変わります。境界の立会いや測量、法令上の確認が必要な土地ほど、引き渡しまでに時間がかかります。相続税の納税期限は10か月なので、そこから逆算し、いつまでに買い手を決める必要があるのかを先に考えます。

Q. 相続登記は、いつまでにすればいいですか?

令和6年(2024年)4月1日から、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務づけられました。正当な理由なく申請しなかった場合は、10万円以下の過料の対象になります。施行前に相続した不動産も対象で、令和9年3月31日までとされています。

Q. 業者買取は、なぜ市場で売るより安いのですか?

買い取った会社が、区画分譲などを行い、商品として売ることを前提にしているためです。測量や整備、売れるまでにかかる費用や時間が、買取価格に反映されます。一方で、早く確実に現金化しやすいため、納税期限が近づいている場合には選択肢の一つになります。時間があるうちに検討を始めれば、それ以外の方法も比較しやすくなります。

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